※この話は実話を元に、一部フィクションも加えています。
初めて経験したアパレル販売スタッフの仕事
初めて社会人となっての仕事はアパレルの販売スタッフだった。
契約社員ではあったもののそこは大手企業。僕はとりあえず就職ができて嬉しかった。
僕が配属されたのはブランド直営店の地方店舗。
3人のスタッフでシフトを回す小さなお店だ。
店長は40代の女性で、会社からも信頼されているベテランスタッフ。
そこに新人の僕、、、と同じタイミングで入社したらしい新人のA君も配属された。
新人同期2人まとめての配属だ。
僕は新しい仕事に就くことに期待とワクワクを胸いっぱいに抱えていた。
ファッションが好きで学生の頃から漠然と
「ショップスタッフとして働いたら楽しそうだなぁ。」
と憧れがあったからだ。
僕はこれからの華やかな仕事とライフスタイルをエンジョイするはずだった。
でも、働くということはそんなに甘くはない。持っていた期待もワクワクする気持ちもすぐに消え去ってしまうことになる。。。
なぜなら、いざ仕事を始めると、そこは厳しいスパルタ環境だったからだ。
・鬼のようにダメ出しをする店長。
・思うように結果を出せないノルマ。
実はもともとブランド自体が人気の落ち込みを深刻な問題としており、僕が入社したタイミングはブランド全体としてや会社全体としての業績が傾き始めている頃だった。
そんな厳しい状況であったが、結果を出せないことに対して簡単に言い訳をする訳にはいかない。
僕は毎日毎日、思うように仕事で成果が出ない日々に悔しい思いをしていた。
加えて店長もお店の売上を上げるために必死。新人である僕やA君にもすごく厳しかった。
今考えるとコンプラなんか完全無視のキツめのパワハラだったと思う。
それでも僕は耐えた。とにかく結果が欲しかった。
同期で新人のA君も同じく辛い思いをしていた。
A君も僕も思うように結果が出せず、店長からの厳しいダメ出しの毎日。
僕たちは同じどん底のような状況を分かち合った。
たまに店長が休みで、僕とA君だけの出勤の日はリラックスして楽しくのびのびと仕事ができた。
相変わらず売れないお店で結果は散々だったけれど、それでも
どうやったら改善できるのか?
さっきの接客が何が悪かったのか?
などなどお互いでアドバイスをしながら励まし合った。
もちろん店長のグチや不満なんかも言い合った。
僕たちは同じ職場で働く「仲間」として結束を強めていった。
最初は何てこともない日だった。。。
ある日、いつものように僕とA君とが出勤のシフトだった時、ちょっとした事件が起きた。
朝からお客さんの入店が少なく、思うようにその日の売上ノルマを全く達成できていない。
「これ、このままじゃ明日店長に怒られる流れだよね?」
「いつものことだけど、なんとかしないとねぇ。。。」
なんて会話を2人でしながらポツポツ来店するお客さんへ冷静に接客をしつつも内心はかなり焦っていた。
ノルマには全然届かない売上はそのまま変化することなく時間はすぎた。
・
・
やがて閉店1時間前となった夜7時だっただろうか。
初めて来店する若い男性が1人フラッと買い物に来た。
「いらっしゃいませ〜」
フラフラと店内を歩きながら洋服を手に取る若いお客さんに話かけつつ、いろいろな商品をオススメしたりコーディネートの提案をした。
A君もサポートに回ってくれ、洋服の魅力が最大限伝わるように2人で力を合わせた。
接客を続けながら、やがて閉店時間10分前となったところだろうか。
その若いお客さんが指を指しながら
「コレください!」
と言った。
「1点売れた!嬉しい!」
と、思ったすぐその後、僕とA君は耳を疑った。
「それと、コレと、コレと、コレと、あとコレは色違いで2つで!」
なんと、こちらからおオススメする前に大量のおまとめ買いをしてくれたのだ。
僕とA君は閉店ギリギリの店内で2つの大きな買い物袋に購入して頂いた洋服を詰め込んだ。
「ありがとうございます!!」
初めて来店してくださった若いお客さんを見送って、僕たちはハイタッチをした。
ダメだと思ったいたその日の売上ノルマは超えていた。
僕たち2人はいつも以上の達成感を共有しながら閉店作業を終え、帰宅準備をした。
するとA君が
「このあとマック行きません?」
と提案をしてくれた。
マックの帰りに幸運の女神を見た!?
僕たちはたまーに仕事帰りに2人でマックへ行く習慣があった。
2人とも一人暮らし。お酒もそんなに飲まない。そして何よりお金がなかったのでマックが手軽で行きやすかった。
お店から歩いて200mほどにあるマックで僕たちはさっきの嬉しい奇跡の祝杯をあげた。
今から思えば大した出来事ではないが、当時の僕にはなかなか結果が出せない日々の中で、小さな成功体験だった。
その日の会話はいつも以上に弾んだと記憶している。
「そろそろ帰ろうかー、お疲れ!」
僕たちはマックで夕食を済ませ、ある程度会話の切りが良いところで帰ることにした。
秋が始まる季節の変わり目で、少し肌寒くなった夜の街を2人で並んで駅まで歩いた。
ポツポツ人通りがある道をA君と会話をしながら歩いていると突然、一瞬2人とも会話が途切れた。
「あれ?今すれちがった人ってセクシー女優の〇〇じゃね?」
「えっ!やっぱり!?僕もそう思った!」
僕たちはさっき突然前から歩いてくる美しい女性に目を奪われていた。
そして僕もA君もその女性がセクシー女優の〇〇だと気がついた。
僕たち2人は驚いたし、何よりもお互いがそのセクシー女優を知っていたことがもっと驚いた。
思いがけない出来事にテンションが上昇。こんな2人は客観的に見たら「無能」丸出しだ。
でも僕たちは「幸運の女神」を見たのかもしれない。
これから僕たち、頑張れるのかもしれない!
。
。
。
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。
だが、その後、1年もしないうちに勤めていたお店は無くなった。
お店だけではない、運営元の大手企業も倒産した。
傾き始めていた経営を僕たち販売スタッフで立て直すことはできなかった。
残念ながらあの日に僕たちが見たのは幸運の女神ではなかった。
「街で偶然セクシー女優を見た」
ただそれ以上でも以下でもない。ただそれだけだった。。。
END
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ライター:高嶋一行(Kazuyuki Takashima)
tokyosamplesale.com運営者。
英国にてロンドンコレクション参加ブランドで1年間働き帰国。
東京ファッションウィーク参加ブランドの販売スタッフを経験した後、インポートブランドを扱う輸入代理店勤務。
その後、再び渡英し日本ブランドの海外セールスを行うエージェント業務を行っています。
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